ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

監禁陵辱 鬼畜大縄跳び

小学校の頃、妙にアツい先生がいた。

先生はイケメンだった。マネーの虎の時の吉田栄作さんみたいな髪型をしていた。そしてなんと言っても、体操の学校を出ていたのでバク転などを披露し、生徒たちから黄色い声援を浴びていた。

先生は体育の授業でサッカーなどをやることになると、小学生相手にマジのプレイをするので、生徒から人気が高かった。僕は、「小学生相手にマジのプレイをするなあ。」と思っていた。

 

先生は、怒ると職員室に帰ってしまって生徒たちが自主的に謝りにくるのを待っているみたいなお決まりのくだりを好んだ。「学級だより」みたいなよくあるやつも、忙しい合間をぬって手書きで自作してよく配ってくれた。先生の似顔絵付きで。似顔絵は爽やかなイケメンに描かれていた。僕は、「似顔絵を爽やかなイケメンに描くなあ。」と思っていた。

 

先生は、怒るときにアゴがしゃくれた。

 

 

先生はとてもアツい人だった。クラスでケンカが巻き起こった時、仲裁していた友人Aに、ケンカをしていた当人が「お前には関係ないだろ」と言い、友人Aが「関係あるよ、友達だもん」とえらく感動的なセリフを吐いた時、先生は涙ぐんで友人Aを褒め称えた。

 

僕はそんなアツい先生が大好きであった。この人ちょっとあれだなと思ってしまう時もあったものの、大好きではあった。

先生のあれ具合を象徴する出来事として、ある日の体育の授業で、大縄跳びをした時の話がある。

僕たち生徒のほとんどは大縄跳びの経験がなく、とても下手クソだったので、なかなか回数が続かなかった。5回も続かなかった状況を見かねた先生が、「とりあえず30回を目標に跳ぼう」と言い出し、僕たちは、「多いな」とは思いつつも、順調に回数を伸ばしていった。

20回跳べるようになったあたりから、僕たちは壁にぶち当たり、全く続かなくなってしまった。気づけば授業の終わりの時間が近づいていた。

ふと時計を見た先生は、「30回跳べなかったら授業終わらないからな。目標を決めたら達成することがすごく大事だから。」と言った。それは先生が勝手に設定した目標だろ、とみんな思った。僕は、先生に対して、「やはり先生はあれな人なのだろうか」という思いを抱き始めていた。

目標はなかなか達成できず、僕たちはその後に控えていた授業も、掃除の時間も、全てすっ飛ばして、大縄跳びに捧げた。もはや日も暮れかけていた時、先生は、「よし、じゃあ、25回は跳ぼう」と言った。みんなが、変な感じになった。

とはいえ、このままだとマジで家に帰れなくなりそうだったので、僕たちからすればとてもありがたい一言であった。

僕たちは最後の力を振り絞って縄を跳び、ついに目標の25回を跳んだ。24回目くらいを跳んだ時、先生が「続けて!!続けてー!!!」と絶叫した。僕たちはその勢いで跳び続け、なんと当初の目標30回もクリアすることができた。

僕たちは感動した。喜びのあまり、泣き出す生徒もいた。もはや、僕の中では先生はあれな人ではなくなっていた。みんなの力で目標を達成する喜びを教えてくれたアツい素敵な恩師となっていた。

 

僕は家に帰って、「いや、やっぱちょっとあれな人だな」と思った。