ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

恐ろしい少年

中学生の頃、通っていた塾の同じクラスに、S君というひょうきんな人がいた。S君は軍事オタクで、ものすごく沢山の兵器の名前を知っていた。S君は、将来、自衛隊に入りたいと言っていた。ひょうきんな性格で軍事に詳しいって、なんか将来、快楽殺人犯とかになりそうだなと怖かったが、黙っていた。

僕は中学校で野球部に所属していたので、坊主頭だったのだが、いつもいつもS君に坊主頭であることをいじられていた。S君も坊主頭だったので、いじられる意味が全然分からなかった。

ある日の授業中、S君が僕に「お前の歌作ってきたから。」と言い始めた。怖いわ、と思った。先生も優しい先生だったので、なぜか「みんなで聴いてみましょう」と言い出した。仕事しろよと思った。

僕はその歌詞を無理やり覚えさせられたので、今でも覚えている。

 

<丸山君の歌>

ボク 丸山です 丸山です

丸山 丸山 いらっしゃ~い(桂三枝師匠のモノマネで)

鼻くそ ホジホジ 耳クソ ホジホジ へそゴマ グリグリ おいしいな~(両手を胸の前に持ってきて)

異文化コミュニケーション 大切なのは 思いやり?

※転調(こち亀のオープニングテーマのメロディに変わる)※

あそこは丸山~ あ~きっと丸山~ みんなおいでよ丸山の街へ~

<丸山君の歌おわり>

 

この、小便一滴ほどもおもしろくない歌を、彼は得意気に歌って聴かせてくれた。なんで振り付けまであるのか全く意味が分からなかった。教室の反応はというと、まごうことなくすべっていたのだが、彼はこの歌に異常なまでの愛着を持っており、僕はことあるごとに歌わされた。僕はこの歌が嫌だった。何が嫌って、僕の本名は丸山ではないのだ。誰かよく分からない人物の名前を自称するなどという、とち狂った歌を歌う意味が分からなかった。「丸山」というのは、どうやら丸い坊主頭から短絡的に思いついたらしい。センスがゼロであった。

 

まあ、とはいえ彼とは卒業までずっと仲良くさせてもらった。卒業の時はやけに寂しかったのを覚えている。

そんな彼が最近Facebookで友達申請をしてきたので見てみると、自衛隊に入っていた。小便一滴ほどもおもしろくなくても、夢は叶うんだなと思った。