ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

おじいちゃんの話

僕のおじいちゃんはわりとひょうきんな人だった。

ある時はケーキが甘ったるくてまずいなどと言って、醤油をかけて食べて家族から爆笑をかっさらっていくような人だった。醤油をかけるのはそんなにおもしろくないので、僕は笑わなかった。

 

僕は小さいころ、お菓子を食べている時におじいちゃんに「うまそうなもの食ってるな」と言われるのがとても嫌だった。これを言われると、母親が「おじいちゃんにもあげなさい」と言うので、あげなければならなかったからだ。途中からおじいちゃんは、その母親の法則を見破ったらしく、僕が食べているときにわざと「うまそうなもの食ってるな」と言うようになった。母はやはり「おじいちゃんにもあげなさい」と言うが、おじいちゃんは「いや、いらない、いらない(笑)言ってみただけ(笑)」などと少しあれな態度で僕をはぐらかすのだった。当時の僕は、おじいちゃんは少しあれなところがあるなと思った。母親もおじいちゃんがあれであることを見ぬいたようで、それ以降あまり「あげなさい」発言をしなくなった。

 

おじいちゃんは僕がモテないことをよく馬鹿にしていた。自分は嫁を見つけてゴールインしたから気楽なものだった。「お前もはやくべっぴんさんを見つけて結婚しなさい」みたいなことをよく言っていた。「お前「も」って、僕のおばあちゃんは、あんまり、」というところまで考えて、一旦思考を停止させることにした。

 

そんなおじいちゃんであったが、去年のバレンタインデーに亡くなり、急遽実家に帰ることになった。たまたま予定がなかったからいいものの、おじいちゃんに「お前はどうせバレンタインデーでも暇なんだろうから、来れるだろ」と言われているようで若干シャクだったが、とにかく悲しい気持ちだったので急いで帰った。

 

実家はどれだけ悲しみに暮れているのだろうと思ったが、意外にも、というか、異常なほど明るかった。いやもう、明るいを通り越して、不謹慎の連発だった。親戚がたくさん集まって、故人を偲んでいたが、田舎のおじいさんおばあさんはブラックなネタが大好きなもので、「次は誰が死ぬかダービー」みたいなことを始めたりしていた。こっちはおじいちゃんを亡くしているというのに、ヤバイ連中だなと思った。後日談として、このダービーはけっこう当たっていた。怖かった。

 

そんな親戚一同も、棺に花を添えるときにはわんわん泣いていた。僕もめちゃくちゃ泣いた。

こんなふうに、自分のお葬式で、久しぶりにみんなが仲良く集まって、明るく話して、最後は号泣してくれるというのは、おじいちゃんは幸せ者だなと思った。