ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

神秘的な形の石ころを見つけたら絶対に蹴ってはいけない

小学生は、下校中などに道端に落ちているものをやたらと蹴って歩きたがる。

僕が小学生の頃も例外ではなく、みんな石ころなどを見つけては蹴りながら下校していた。

 

ある日、何人かの友達と下校していた時、道端に綺麗で蹴りやすそうな、黒く丸い石ころのようなものが落ちていた。頭がよく冷静沈着でリーダー格の男の子が、先陣を切ってその物体を蹴り始めたため、その物体は彼の所有物となった。

非常に形がよく綺麗に転がるので、僕たちは羨望の眼差しで彼とその物体を見ていた。僕たちが彼の邪魔をしてその物体を奪おうとすると、彼はクールに「やめろよ。これは俺のだからな。いやぁ、めっちゃ綺麗に転がるわこれ。いいだろ。」と言って制すのであった。

 

その物体が地面を転がり少しずつ角が削れて、ますます丸みを帯び、表面が剥げて中身の茶ばんだ物質が露わになってきた頃、僕たちの一人が、「あれ?それ、うんこじゃね?」と言った。その一言で、僕たちの空気は一瞬で凍りついてしまった。しかしここまで来ると、もう引き返せない。言ってしまったことは仕方ないので鑑定しようという話になり、僕たちはにおいを嗅いでみた。それは完全に、うんこだった。

 

クールな彼が得意気にうんこを蹴っていたというギャップに耐え切れず、僕たちは彼を指さし、大爆笑した。しばらくして彼の様子を見てみると、とてもすました表情をしている。様子がおかしいとみんなが黙り始めると、彼は冷静に、「え?そうだよ?うんこだよ?」と言った。彼は、「うんこだと知って蹴っていた人」という設定にしようとしているようであった。恥ずかしいから嘘をつくにしても、もう少しまともな嘘があるだろ、と思った。いや、うんこだと知って蹴っていたんだとすると、それはもうただのサイコ野郎ということになるけどいいのか?と思った。「めっちゃ綺麗に転がるわ」などと発言していたのも、心の底からうんこを愛しているようでめちゃめちゃ気持ち悪いなと思った。

 

結局彼はその選択を貫くことに決めたらしく、「これいいわぁ」と言いながら綺麗な形のうんこを家まで蹴り続けた。去り際、彼は自宅の庭でうんこを蹴りながら、僕たちに向かって、「これここ置いとくけどパクるなよ。」と言った。パクらねえよと思いつつ、これ以上傷口を広げるのはやめたほうがいいんじゃないかと思った。僕たちは「パクらない」と約束し、彼と別れた。

遠くの方で、「パクられないように隠しとくか」みたいなわざとらしい声が聞こえた。

うんこを外から運んできて自宅の庭に隠してる奴って、それ、やばいな、と思った。