ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

見知らぬ老婆と仲良くなったのに、まさかあんなことに

小学生の時、友達と下校中に道端で倒れこんでしまっているおばあちゃんを見つけた。つらそうな顔をしていたので、大丈夫ですかと声をかけてみると、「情けないねえ、足腰が弱っているから、倒れてしまってねえ」と言われた。僕たちはおばあちゃんを起こして、肩を支えながら家まで送り届けてあげることにした。家についたおばあちゃんは、僕たちに何度もお礼を言い、「せっかくだから上がっていきなよ」と言ってお茶を出してくれた。「それは悪いよ」と僕たちは断ろうとしたのだが、おばあちゃんがどうしてもと言うので、僕たちも一杯だけもらうことにした。

話によると、おばあちゃんはその家に一人暮らしなのだという。子どもは都会に出て行ってしまい、夫も亡くなったので、今ではこうして一人で寂しく暮らしているそうだ。足腰が弱ってしまい、外に出ると倒れこんでしまうこともしばしばあるのだという。僕たちは心配になり、「おばあちゃん、足腰が弱いなら杖とか使ったほうがいいと思うよ。」と言った。おばあちゃんも優しい顔で、「そうだねえ。そうするよ。」と言って、約束をしてくれた。

結局その日は、一時間ほどおばあちゃんと楽しく話して、僕たちは帰ることにした。別れ際も、おばあちゃんは優しい笑顔で「今日は本当にありがとねえ。みんなが来てくれて楽しかったよ。おばあちゃん寂しいからさ、いつでも遊びにおいでね。」と言っていた。

 

数日後、僕たちはおばあちゃんが元気で暮らしているか気になったので、再びおばあちゃんの家を訪れることにした。訪ねてきた僕たちを見たおばあちゃんは、とても嬉しそうな顔をして、「上がっていきなよ」と言ってくれた。僕たちは遠慮したのだが、おばあちゃんが寂しそうな顔をするのが気の毒で、少しだけお邪魔することにした。

おばあちゃんは、杖を買っていた。「おばあちゃん、杖使うようにしたんだね。」と言うと、「みんなが言ってくれたからね。買ってみたんだよ。歩きやすくていいねえ。」と答えてくれた。

この日、おばあちゃんは、僕たちにカレーをごちそうしてくれた。「毎日一人でごはんを食べるのが寂しくてねえ。誰かと食べるなんて何年ぶりだろうねえ。嬉しいよ。」と言いながら、嬉しそうにカレーを食べていた。一時間ほどおばあちゃんと談笑し、僕たちは帰宅した。

 

その後も数回、僕たちはおばあちゃんの家に遊びに行った。おばあちゃんはその度に嬉しそうな顔をした。帰り際になると、寂しそうな顔をして、「また遊びにおいでね」と言ってくれるのだった。

おばあちゃんと本当に仲良くなった僕たちは、おばあちゃんのことを本当に大切な存在だと思っていた。ずっと元気でいてほしいと思っていた。

 

そんなある日の朝、学校で先生が「ちょっとみなさんにお話があります。」と神妙な面持ちで話し始めた。先生は、「最近、このクラスに、近所の一人暮らしの方の家に勝手に上がりこみ、ヌケヌケとごはんをご馳走になり、平然と一、二時間居座る生徒がいるそうです。その方から学校に連絡があり、迷惑だからやめてくれと言われました。犯人探しはしませんが、自覚のある人は即刻やめてください。」と言った。

 

僕たちの中でおばあちゃんは、「クソババア」と呼ばれるようになった。