ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

音楽によって狂ってしまった幼児たち

今日、また近所で縁日みたいなものが開かれていた。以前にも開かれており、前回は部屋に聞こえてくる音だけを聞いて楽しんでいたので、どうせなら今回は実際に行ってみようと思い立った。

 

会場に着くと、決して広くない場所に出店が並び、頭上には提灯がいくつも垂れ下がっていた。雰囲気だけでも夏の感じが漂っていて、めっちゃよかった。ただ、僕みたいに一人で来ている人はいなかったので、子ども連れの親御さんが僕をちょっと気持ちの悪い目で見てきた。

 

出店は小規模なもので、やきそばが100円で売っているというような良心的なものであった。

出店の中に、たべっ子どうぶつだけが景品となっている射的があった。どういうわけか、ここだけ近所の子どもたちが異常に群がっていて、怖かった。

f:id:pepuchi:20160716204003j:plain

 

 

f:id:pepuchi:20160716204226j:plain

 

 

 

しばらく佇んでいると、またカラオケ大会みたいなものが開かれていた。

浴衣を着た小さい子どもたちがステージに登場し、会場にはとなりのトトロでおなじみの「さんぽ」のイントロが流れた。会場中がほほえましい目でステージを眺めていたのだが、子どもたちは歌詞が分からなかったのか、狂ったように「歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう」とだけひたすら繰り返していた。隣で保護者としてついていた女性の方が苦笑いを浮かべながら、気を利かせて「さんぽ」を停止し、カラオケに「アンパンマンのマーチ」を入力した。「アンパンマンのマーチ」が始まると、子どもたちは狂ったように「歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう 歩こう」と繰り返した。怖かった。

曲が終わり子どもたちがステージからはけたあとも、舞台袖から、「歩こう 歩こう 歩こう 歩こう」と聞こえていた。あの子どもたち、マジで狂っちゃったんじゃないかな、と思った。

ケンジさん

中学校の頃、仲の良かった友達と三人で市民プールに遊びに行った。僕たちは三人とも非常に冴えない中学生で、いつもヤンキーの先輩からパシリにされているような男たちであった。そのため、憎きヤンキーたちから離れ、こうして自由に遊べる瞬間は数少ない至福の時であった。

 

プールでしばらく遊んでいると、同い年くらいの男が「ねえ、どこ中?」と笑顔で話しかけてきた。男は、「◯◯中のケンジさん知ってる?」「ケンジさんめっちゃ喧嘩強いから、ケンジさんにだけは逆らわないほうがいいっすよ。」「俺ケンジさんとめっちゃ仲良いんだけどね。」などと意味の分からないことを僕たちに語っていた。なんか気持ちの悪い奴にからまれたなと思った僕は、適当にあしらって他の場所で遊んでいた。

 

20分ほど経って友達の姿が見当たらなかったので探しまわると、まだその男にからまれていた。どうやら男は、「自分は喧嘩の強いケンジさんと仲が良いので、自分にも逆らわないほうがいい。さあ、お金を渡せ。」という要求がしたかったらしい。お金をせびるだけなのにえらく回りくどい言い方をしたなと思ったが、まだ見ぬケンジさんに免じて何も言わなかった。ケンジさんにだけは逆らわないほうがいいから。ケンジさんは、パネェから。

 

このあたりで僕たちは、暗黙のうちに「この男を怒らせずに誰が一番多く『ケンジさん』と言えるか」というゲームを始めていた。僕たちは矢継ぎ早に「ケンジさんてすごいんすね」「やっぱケンジさんのこと尊敬してます?」「俺もケンジさんの舎弟になりてぇ〜」などと多くのフレーズを繰り出していた。さりげなく一度「ケンちゃん」と言ってみたが、バレなかった。

僕たちのヤンキーに対する底知れない悪意に男は全く気づかず、男が「ケンジさんには警察もビビってるらしいっすよ」などと口にするたび、僕たちは脇腹をつねってなんとか感情を抑え、深刻な表情をしていた。深刻な表情をすればするほど、彼は調子に乗ってケンジさんの武勇伝を語り、僕たちの恐怖心を煽ろうとするのだった。

ここで友達の一人が、「今日はこれでなんとか勘弁して下さい」と真剣な表情で10円玉を出すという一世一代の大勝負に出た。もう一人の友達を見ると、下を向き肩を震わせていた。僕もまあまあ苦しかった。

男は、「オッケ」と言って10円を受け取り、去っていった。僕が「ケンジさんにもよろしくお伝え下さい」と言うと、男はこちらを振り返り、口元だけニヤリとさせ、かっこつけて帰っていった。こんな人間にだけはならないようにしようと思った。

恥ずかしい骨格

僕はあごがしゃくれているのだが、小学生の頃、心配した親が僕に矯正をさせようか悩んでいたらしい。

ある日の夜、親が深刻な面持ちで僕を座らせ、「イーってしてごらん?」と言った。僕がしゃくれた噛みあわせを見せつけると、親はただただ悲しげな顔をした。いや、そんなリアクションをしたら遠回しに傷つくだろと思った。

そんなことはつゆ知らない親が、「『さしすせそ』って言ってごらん?」と言った。いじめじゃねえかと思った。僕はしゃくれた骨格で、

「シャ シ シュ シェ ショ」

と言った。親は少し怒ったような口調で、「なに?『シャ』って言った?『さ』でしょ?『さ』!」と言った。怖かった。僕は、一呼吸おき、改めて、

「シャ シ シュ シェ ショ」

と言った。親はさらに口調を荒げて、「さ!」と言った。僕は、何がそんなにキレられるのかも分からず、今度こそ親が期待しているような発音をキメてやると思い、ゆっくりと、冷静に、そう、今度こそは、僕にならできる、今までだってそうやってきたんだから、そう信じて、

「シャ シ シュ シェ ショ」

と言った。親は悲しげに、「やるしかないな…」とつぶやいた。勝手に決断してんじゃねえと思った。

 

数日後、僕は歯医者に連れて行かれた。矯正についての一通りの説明を受けて、歯型を取って、僕の矯正ライフが幕を開けた。

 

矯正をしたことがある人は分かるかもしれないが、始めた頃は器具が邪魔でうまくしゃべれない。何気なく「学校で馬鹿にされそうだな」と親に言うと、心配した親が担任の先生に話を通しておいてくれた。この先生は人に対する思いやりが欠如した特異な先生だったので、僕は不安だった。翌日の朝の会で先生は、「彼は今日から矯正を始めたのでうまくしゃべれませんが、変な目で見ないようにしましょう。」という0点の紹介をしてくれた。友達はいいやつばかりだったので、変な目で見てくるなどということはなかった。こういう時、周りの大人が事態をややこしくするのだと学んだ。

 

この頃から、姉と姉弟ゲンカで口論になると、姉は僕のしゃべり方の違和感で吹き出すようになった。めちゃめちゃ腹立つが、確かに、しゃべり方おかしいやつが真面目な顔で反論してきたら僕も笑うわと思った。僕は矯正のおかげで、争いのないピースフルな暮らしを手に入れることができた。

 

こんな感じで僕の矯正ライフは平坦な道のりではなかったものの、矯正それ自体は順調に進行した。しかし長続きしない性格なので、数年後、どうにもめんどくさくなって、しゃくれが治らないままやめてしまった。

結果として、「しゃくれているものの、歯並びだけはやたら良い」という、なんかすごく恥ずかしい骨格になってしまった。

「熱血!!palet体育館」活動報告6

最近、王道ピュアアイドルのpaletさんの番組にMCとして僭越ながら出演させて頂いている。僕が「監督」として「部員」のメンバーさんに熱血の指導をしていくというコンセプトの番組である。

 

 

今回の放送は井草さんと渡邊さんのご出演であった。最近のアツい出来事を報告するというコーナーでは、井草さんが美容鍼を打ってきたという報告をしていた。顔中に鍼を刺している画像を見せていただき、痛そうだなあと思っていたら、どういうわけか井草さんが僕の顔をボールペンで刺してくるという今世紀最大のサイコ・サスペンスが巻き起こった。「ちゃんとツボ分かってるから」と言っていたが、そんなわけはないと思った。痛かった。井草さんは、「小顔になった?」などと言って狂喜乱舞していた。殺されるんじゃないかと思った。渡邊さんは渡邊さんで、「あごが引っ込んだんじゃないか」などと言ってシャクレている僕をディスっていた。このお二人は一体どういう教育を受けて育ってきたんだろうと思った。

 

架空の通販番組のていで様々な商品を紹介するという企画では、ピコピコハンマーを紹介していただいた。

井草さんは、ピコピコハンマーのことを「とんこち」という謎の呼び方で呼んでいた。使い方として、「最近クマが出没するのが流行ってるらしいので、これをピコピコ鳴らすとクマよけにもなります」と説明していた。井草さんいわく、東京でもいつクマが出るかわからないらしい。

渡邊さんは、「なんとこちらの商品!今買っていただくと!私がついてきます!」とすごいことを言っていた。198円で買えるらしい。渡邊さんはやはり少し摩訶不思議な方だと思った。大喜利にアツく回答するという企画でも「世界一熱血な人の今夜の晩ごはんは?」というお題に対して「血」というスプラッタな回答をしていた。

 

今回は部員たちの多少の反乱があったものの、平和な回であった。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

「熱血!!palet体育館」活動報告5

少しずつ、静かに生じていたほころびは、いつしか大きな断裂となって修復不可能なまでに成長していた。ゆっくりと、権力は化けの皮を剥ぎ取られ、自分でも気づかないうちに、民衆の造反を許すようになってしまっていた。

彼女たちは、アイドルという隠れみのを使って笑顔で僕に歩み寄ってきた。そこに反乱の意志は、微塵も感じられなかった。ただの従順な市民の顔をした、二人の人間だった。その二人の内に潜む「抹殺」の二文字は、権力にあぐらをかいた僕の目には、決して映らなかった。

 

隔週月曜日に出演させているSHOWROOMさんの番組「熱血!!palet体育館」は、王道ピュアアイドルのpaletさんに僕が監督として熱血指導をしていくというものであるが、放送5回目を迎える今日、ついにメンバーさんが、権力を振りかざす僕を抹殺しにかかってきたのである。その反逆の一部始終を、説明していきたい。

 

まずは放送前から振り返ってみよう。

今日の出演メンバーである藤本さんは、放送前にブログを更新していた。何か嫌な予感がしたわけではない。特段の違和感はそこになかった。しかし僕はなぜか、ブログのリンクをクリックしていた。

そこで見たブログの締めに、彼女は衝撃の一言を綴っていた。

f:id:pepuchi:20160627224822j:plain

 

 

 

 

 

 

狂気の沙汰だ。

なんだか分からない謎のピンクの動物が、「いじり倒す」という言葉の後ろで、満面に微笑んでいる。笑いながら、宣戦布告をしている。彼女は、狂っていた。

 

 

この不思議な感情を処理できないまま、放送が始まってしまった。気が付くと僕は、平口さん、藤本さんの二人から、フルパワーで攻撃されていた。ここで、番組中に告知をしていた藤本さんのツイートをご覧頂きたい。

f:id:pepuchi:20160628091257j:image

 

  「無敵」という言葉は、「敵が無い」と書く。彼女たち二人の力を合わせれば、「敵は無い」。僕は、彼女たちにとって、「敵」だったのだ。念のため、「敵」の意味を掲載しておこう。

f:id:pepuchi:20160628092548p:image

 

 

 

放送開始当初から危険視していたこの二人が交わってしまったのだから、出演者が知らされた時点で気がついておくべきだった。これまでの放送で不満も飛び交っていたが、本当は素直な部員たちなのだろうとたかをくくっていた僕の認識が甘かった。僕は、彼女たちの敵として、社会的な制裁を受けた。

 

 

とはいえ、企画が始まってからは、彼女たちの反逆もいくぶんゆるやかになった。

「熱血!!通販」という新しい企画は、架空の通販番組のていで様々な商品をアツく紹介していこうというものだった。

平口さんは、黄色のビデオケーブルを、電流が流れて健康を促進するためのものだと思っていた。テレビにつないで肌につけると電気が流れて健康になれるらしい。30名限定で1600円で販売するつもりらしい。笑顔で悪徳なことを言いまくっていて、怖かった。

藤本さんはこのケーブルを、リボン結びにして服につけるものとして紹介していた。電気街口で付けてオシャレに振る舞いましょうみたいなわけのわからないことを言っていた。言ってることは全く分からなかったが、言い方の説得力が異常だった。

 

そのあとは、前回に引き続き熱血な大喜利を行うという企画だった。

平口さんは、「熱血ソング『気合でpalet』のサビを歌ってください」というお題で、「なんくるないさ〜 なんくるないさ〜 パパパパレット アツアツ イェイ」と歌っていた。意味がよく分からなかった。しかし、亜熱帯地域である沖縄の言葉を出して心理的に熱さを感じさせる描写から始まり、「パレット アツアツ」と直球でビシっと締める感じは、あとから思い返してみると実はとても秀逸なのではないかと思った。大量の上矢印を多用するところは前回と変わっていなかった。

藤本さんの回答は、平口さんに「古い」と言われていた。それに対し「古きよき時代の懐かしさを感じてほしいから」などと巧妙な言い回しを矢継ぎ早に繰り出す藤本さんは、人を言いくるめるのがめちゃめちゃうまいなと思った。

大喜利で体力を使いきったお二人は、最終的に、狂ったように笑いながら「タスケテ〜♪タスケテ〜♪」と謎の歌を歌っていた。地獄のような企画は時に人を破壊するのだなと思った。

 

はや5回目の放送が終了しました。お楽しみいただけていれば幸いです。次回もよろしくお願いします。

人妻とシャボン玉

昨日ライブ前の空いた時間で公園で軽食を食べながらぼーっとしていたら、奥様方が子どもを遊ばせながら雑談をしていた。ふいに奥様の一人が、「シャボン玉して遊ぼうね」と子どもに持ちかけた。奥様はカバンの中からシャボン玉セットを取り出し、数多のシャボン玉を公園内に飛ばし始めた。

奥様方は、

「なんかこのシャボン玉全然割れないのね。」

「そうなの。これ、割れにくいシャボン玉らしいの。」

「へぇ~。すごい時代になったものね。」

などといった平和な会話を繰り広げていた。その横で、僕の服には大量のシャボン玉が割れずにピッタリとくっついていた。なんか奥様方の前で服についたシャボン玉を払うのも角が立つので、僕は携帯をいじるふりをしながら、自分の服に次々とシャボン玉がつくのをじっと我慢していた。

僕の服に20個か30個くらいシャボン玉がついた頃、奥様方が僕に気づいたようで、急に黙りだし、笑いをこらえているかのような空気が流れ始めた。すごい時代になったものだなと思った。

 

帰りに電車に乗っていたら、お母さんとおばあちゃんと子ども二人の計四人の家族連れが乗ってきた。僕が席を移動すれば四人並んで座れる形だったので、別の席に座った。これがカップルだったら死んでも移動しないけど、家族連れだったので移動した。カップルだったら、死んでも移動しないけど。

家族連れは、僕が空けた席には座らず、電車の両サイドに二人ずつ座った。せっかく移動したのにと思って恥ずかしかった。僕が最寄り駅に着いて降りるとき、おばあちゃんが勝ち誇ったかのような顔で僕をじっと見てきた。すごい時代になったものだなと思った。