ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

田舎の中学でワルの方々に教えられたこと

中学に入学したてのころ、何の委員会だったか、集まりがあった。

 

その日が初めての集会で、教室に集まった僕達を前に担当の先生が委員会の仕事内容について話をしていた。

やがて話が終わると、先生が「今日はみんなが親睦を深められるよう、あるテーマにそって議論をしてもらおうと思います。」と言い出した。田舎の中学校だったので先輩にはなんというかワルな方々も多く、デブでガリ勉だった僕は、先輩方と議論をするなど怖くて仕方がなかった。

テーマは「無人島にひとつだけ持っていけるとしたら何を持っていくか」だった。案の定、先輩方は黙って議論をしようとしなかったので、しばらく沈黙が続いた。ふと先生を見やると、先生も神妙な面持ちで沈黙しており、「いやなんでだよ。お前がまいた種だろ。」と思って笑いそうになったが、僕が何か口火を切れるわけはなかった。

 

さすがに見かねた先生が、「じゃあ、きみ。きみはどうする?」と僕を指名してきた。僕が一番指名しやすいと察したのだろうか。この先生は本当に卑怯な生き物だと思った。今思うとこの先生はちょっと息もくさかった。

指名された僕は必死に頭を働かせ、やっとの思いで「ナイフを持って行きます。ココナッツを割ってココナッツジュースが飲めるので。」と、今考えれば全くわけのわからないことを言うと、これがややウケた。これをきっかけに、ワルな方々も気分が乗ってきて、徐々に議論は白熱していった。

ちょくちょく先生は、僕をチラチラ見ながら、「んーでもなあ、無人島には飲み物がないしなあ、飲み物をどうしたらいいかなあ」みたいな、ひねりのないフリを放ってきた。ひるまずに僕が「ココナッツジュースがあるので大丈夫です」と言うと、教室は和やかな雰囲気になるのであった。ワルな方々も笑っていた。

 

ココナッツジュースがおもしろワードだと勘違いした僕は、その後数回にわたり、「ココナッツジュースは完全無欠です」、「ココナッツジュースが世界を救います」などと発言し、そのたびにごく小さな笑いを取って気を良くしていた。僕はココナッツジュースの一点張りで、何とか議論大会を切り抜けることができた。

 

委員会の集まりが終わり、下校しようとしていたところに、ワルな方々がニヤニヤしながら「おい、ココナッツ(笑)」と話しかけてきた。僕はしたり顔で「はい!」と返事すると、怖い先輩方は、「あんまりチョーシこいてんじゃねえぞ」と一言放ち、僕から去っていった。

 

僕の中学校生活は、終わったと確信した。