ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

白ブタと呼ばれた女の子

僕の中学校に、ヤンキーたちから「白ブタ」と呼ばれてしまっている女の子がいた。肌が白くてふくよかな女の子という意味を込めた、なんのひねりもない残酷なあだ名だった。

僕はその女の子とは仲が良く、ヤンキーたちからそうしたあだ名で呼ばれてしまっていることを気の毒に思っていた。

野球が好きで、野球部の僕たちが大会に出るときは、お守りを自作して野球部全員にプレゼントしてくれるような女の子だった。

野球部というのは、マネージャーが作ってくれたお守りを首から下げてユニフォームの下に隠しておくもので、高校野球などをみていると、打席に立った球児が時折胸のあたりのお守りをギュッと握りしめていたりする。まあ、その、若干、おサムいのではないかという気はするものの、彼らなりの青春であるので、いや多分その球児、マネージャーと付き合ってるんだろうなと、「打席に立った時お守り握るからね」みたいな、アレな約束してたんだろうなと、思ってしまうのだけれども、まあそんな僕のうがった見方はどうでもいいとして、そういうものなのである。

ちなみに僕のもらったお守りは、僕の頭が大きくて首にかからなかった。

 

 

二年生か三年生になったころ、なんとその女の子がヤンキーの一人と付き合うことになった。階級がそこそこ上位のヤンキーだったので、そこから一気に校内のパワーバランスが崩れ始めた。彼女は急にEXILEを聴き始め、徐々に化粧めいたものも嗜むようになっていった。「想像妊娠」というワードが話の中で登場したらしく、僕の方をみて、「きみ、想像妊娠なんじゃない?笑」みたいなことを言って、僕が太っていることを若干イジる感じにもなってきた。周囲にいる数人もそれでクスクスとウケるような空気感であった。完全に、校内で、革命が起きていた。

 

僕は、これで校内に彼女を「白ブタ」と呼べる人間などいなくなるだろうと思っていたが、現実は甘くなかった。人間にしみついた習慣は消えないもので、一度でも一世を風靡してしまった「白ブタ」というあだ名は、ずっと残り続けたのだった。僕は、このあたりで急に「このあだ名のひねりのなさはどうなんだ」と腹が立つようになってきた。もちろんあだ名の残酷さにも腹は立てていたが、それはなんか、一度僕が太っていることとかイジってきたし、なんかもうそこは別にいいだろと思った。ただやはり、ひねりのなさだけはなんとかなるだろうと思っていた。せめて品種名に変えるとか、そういう小細工ができるだろうとは思っていた。

そう思った僕は、彼女のあだ名をなんとかして「スーパーゴールデンポーク」という品種名に変えようと決意した。これをヤンキーたちに浸透させていけば、白ブタなどというひねりのないあだ名を排除できるのではないかと考えた。

しかし少し考えて、これでは僕もあだ名で呼ぶことに加担することになってしまうではないかと、反省した。少しでも頭をよぎってしまったことを、今でも彼女に謝りたい。

彼女には、僕が太っていることをイジってきたことを、謝ってほしい。