ロリコンたちへ

小学校五年生の時、みんなに「岡ちゃん」と呼ばれている男の先生がいた。岡ちゃんは僕のクラスの担任だったのだが、ぽっちゃりしていてひょうきんな性格で生徒からの人気も高かった。

林間学校の時、岡ちゃんはさまざまな仕掛けを用意してくれた。なかでも盛り上がったのは肝試しで、岡ちゃんは女子を連れて、これでもかというくらいおどかしていた。

林間学校の次の週の授業中、岡ちゃんが嬉しそうに一つのビデオテープを取り出した。

聞けば、林間学校の時に撮りためた映像であるらしく、僕たちはあの伝説が蘇るのかと再び盛り上がった。

映像は昼間の楽しげなレクリエーションのシーンから始まり、教室では笑いが絶えなかった。肝試しの映像で、男子から「岡ちゃん、女子とベタベタしすぎ！」というツッコミが入り、場は爆笑に包まれるという盛り上がりであった。最後に実はみんなの寝顔を隠し撮りしていたというサプライズもあり、皆が照れ笑いを浮かべ、大盛況のまま上映会は幕を閉じた。

数日後、女子が教室で集まって会議をしていた。議題は「岡ちゃんは割とまじでロリコンで変態なのではないか？」ということであった。

肝試しで女子と連れ添ったのも、寝顔を隠し撮りしたのも、本当は女子小学生の愛くるしい瞬間を独り占めしたかったからではないのかということを、話していた。女子たちは、「そういえば岡ちゃんは太っているし、まさにオタクの代表的な見た目をしている」みたいなとんでもない話もしていた。

僕は怖くなってきて、「そういえば僕はよく岡ちゃんに身体を触られるので、どちらの性別もイケる可能性があるのではないか」という暴論を放り投げてみた。女子たちは、「その線についても議論していかなければならない」といった主旨のことを言っていた。数分後、女子たちが僕のところへ近づいてきて、「どちらもイケる線はナシという結論に達した」という報告をくれた。僕は、「それは、そうだな」と返した。

ともかく、その日から岡ちゃんと女子は険悪なムードとなり、なんてことない時でも岡ちゃんはキレることが多くなった。普通に、岡ちゃんと呼んでもキレるようになった。僕は、それはどうなんだと思った。

因果関係があるのか分からないが、翌年岡ちゃんは、他の学校へ異動した。

僕はみんなで色紙を書こうと提案したが、却下となった。