ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

バラ色のキャンパスライフを送ったケツアゴの男の子

大学に入った頃、一ヶ月くらい所属してすぐにやめてしまったサークルがあった。

僕は顎がしゃくれているので、そのサークルの同期から「ケツアゴ」というあだ名を付けられていた。いやまあ、顎がしゃくれているのは認めるとして、僕はいわゆる「ケツアゴ」ではないので、間違ったあだ名をつけるのはやめて欲しかった。あと普通にセンスがないあだ名なので、やめて欲しかった。あと普通に同期が電車の中とかで僕をケツアゴと呼ぶと周りの知らない人達がしれっと僕の顔を見て「アゴがどうなっているか」を確認しはじめるので、やめて欲しかった。

 

僕をケツアゴと呼ぶ人々の中に、めちゃくちゃイケメンの男がいた。優しいしイケメンだしどうやら勉強もできるらしく、完璧な人間だった。僕をケツアゴと呼んでくること以外は、完璧な人間だった。

 

彼は、振る舞いからしてとてもイケメンだ。彼と同じ授業を取ると、彼は僕の隣で音楽を聴き、ずっと目をつむりながらドラムを叩く真似をしていた。僕は、「そういう感じの人か」と思った。

僕が「なにしてるの?」と聞くと、彼は、「ハハ、ケツアゴの奴には分からねえだろうな」と返してきた。僕は、「了解」とだけ返した。

 

 

あと彼は、他の同期に「芸能人で誰に似てるって言われる?」と聞かれた時、即答で「亀梨和也」とだけ答えていた。僕は、「やはりそういう感じの人なのかもしれない」と思った。

 

 

ある日、サークルの同期たちと夜道を歩いていたところ、彼にそういう感じの習性があることに気がついた。彼は女の子と横並びで道を歩いている時に車が通ると、女の子を腕で包み込み、車から守るような素振りを見せるのだった。そういう感じの人なんだろうなと確信した。

 

同期たちもその習性に気がついたらしく、彼は数日後、「プリンス」というあだ名をつけられていた。プリンスは自分のあだ名を気に入っているようであった。

気に入ってるなら、よかった。