ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

キレる若者たち

小学校の頃に、仲の良かった友達がいつも遊んでいる近所のお兄さんがいた。

僕も、その友達と一緒にそのお兄さんと遊ぶことはあったが、目つきが怖くて寡黙なお兄さんだったので、少し避けていたところがあった。

 

ある日、学校からの帰り道、友達がお兄さんと一緒に歩いていたので僕も一緒に帰ることにした。

お兄さんは、得意気に十徳ナイフみたいなものを見せびらかしていた。お兄さんは、十得ナイフみたいなやつで田舎道をせっせと走るアリとかを刺していた。わりとイカレてる人だなと思った。

その後、友達とお兄さんの会話をただただ黙って聞いていると、どんな会話だったか忘れたが、だんだんと喧嘩するような口調になってきた。ついには二人は口論になってしまったのだが、ブチギレたお兄さんが、十徳ナイフみたいなやつを友達の肩にぎゅっと突き立てたので、いやそれはだめだろと思った僕が、「いやそれはだめだろ」と言って止めた。いやそれはだめだろと思った。切るような道具じゃなかったので、友達の肩は切れていなかったが、あざができていた。これはだめだろと思った。

 

その日、家に帰ってそのことを親に言うと、「それはだめだろ」と言われた。正確にはそれはだめだろとは言っていなかったが、まあそんなようなことを言っていた。ほぼ「それはだめだろ」に近いことを言っていた。

そして、その人とはもう遊ぶんじゃないと言われた。

そうは言ってもまあ、いろいろカードゲームとか教えてくれるお兄さんだったし、確かにカードゲームの「デッキ」のことをかっこつけて「デック」と読んでいるようなあれなところはあるお兄さんだけど、そんな、即付き合いをやめるほどではないだろうと思い、翌日も僕は友達に連れられてお兄さんの家に遊びに行った。

 

お兄さんの家に着いた僕たちはお兄さんの名前を呼んだが、しばらく出てこない。

不在にしているのかと思って帰ろうかと話していると、お兄さんの部屋のカーテンが少し開いた。カーテンの隙間から庭にいる僕たちを覗き見たお兄さんは、ニヤニヤしながらエアガンで僕たちを撃ってきた。その後ろで、なぜかお兄さんの妹もニヤニヤしていた。

 

僕たちは、なんのリアクションもせずに黙って帰った。そのあと二人で食べたチョコパイがやけにおいしかった。