ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

ワケあり物件の秘密

諸事情により引っ越しをするので、この間家探しをしてきた。

思えば僕はあまり家探しに成功したことがない。

 

大学に入るときに上京して最初に住んだところは、上の階に住んでいる男の人がちょっと変な人で、ある日突然僕の部屋を訪ねてきたので話を聞いてみると、「あなたの部屋から、ゴシゴシ、ゴシゴシって、床を拭くような音が聞こえてくるので、何だか分からないがやめてほしい」と言われたのだった。僕は何もしていなかったので、怖くなって引っ越すことにした。退居する当日、部屋で引っ越し業者を待っていると、上の階で「うるせえぇぇぇ!」と発狂している声が聞こえ、そのあとで彼が窓を何度も強く開け閉めする音が聞こえた。うるせえ、と思った。

 

次に住んだ家には、少しでも物音を立てると壁を叩いてくる隣人がいた。普通の話し声で叩いてくるのは日常茶飯事で、機嫌が悪いときは壁を乱打して発狂してしまうので、怖かった。テレビを観ているだけでも叩かれてしまっていたのだが、僕がアダルトコンテンツを部屋で流しているときだけは叩いてこなかった。そこらへんは意外と理解のある紳士なのかもしれない。

 

次に住んだ家では、僕が引っ越した初日になぜか隣の民家の庭に椅子が捨てられていたらしく、民家のおばさんはめちゃくちゃキレていた。僕は当然のように疑われた。まあ、確かに、逆に僕を疑わない理由がないなと我ながら思った。引っ越してきた初日だし、こんなに犯人くさい奴も他にいないなと思った。翌日にはアパートの管理人さんから電話で怒られて、何度も僕じゃないと言ったが、管理人さんはたぶん信じていなかった。数日後、僕の部屋の玄関の前に「◯日までに処分してください。管理人」という貼り紙付きの椅子が置いてあって、やっぱり信じていなかった。処分するのは悔しいので、その上に植木鉢を置いて花を育ててみた。翌日管理人さんに、何をしているんだと怒られたので、これは普通に謝った。まあ、これは普通に、僕が悪かった。

 

そんな出来事があったので、今回ばかりはかなり念入りに調べたうえで入居しようと考えていた。そしてようやく、ここに決めようかという場所を見つけたのであった。新宿に近い場所で鉄筋コンクリート造の1Kの家賃5万円台という超優良物件だったので、ほくほく顔で契約しようと思っていたのだが、念のため、この安さの理由ってなんですかと不動産屋さんに聞いてみた。不動産屋さんは、「この物件、審査がゆるいのでいろんな人が住んでいるんですよ。精神を病んだ人が住んでまして、毎晩全部屋のインターホンを鳴らしたりするみたいで、前の入居者もそれが嫌で1ヶ月くらいで出て行ってしまったんです。それですね。」と言った。

いや、「それですね」、じゃねえ。