ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

しゃくれのルーツ

僕はあごがしゃくれているが、父親も母親も祖父母も姉二人もしゃくれていないので、どうして僕はしゃくれているんだろうと小さい頃からずっと不思議に思っていた。

 

大学に入ったころ、法事で実家に帰ることになった。僕の実家は、いろんな家族の「実家」にあたる家で、法事ともなるとあらゆる親族が一堂に会するのだった。

法事なんて小さいころひいおばあちゃんが死んだ時以来で、久しぶりに多くの親戚と会うので、僕は緊張していた。

 

親族が少しずつ集まってきた。全員、しゃくれていた。

まるで出オチのように玄関の扉を開けられるので、僕は笑いそうになるのを何度もこらえた。

「オショクナッテゴメンネ~(遅くなってごめんね~)」などとしゃくれながら入ってくるのは、やめてほしかった。

「アラッ?モウハジュマッチャッテル?(あらっ?もう始まっちゃってる?)」と、一人ひとりセリフを変えて入ってくるのがとても腹立たしかった。

 

これだったのだ。僕のしゃくれは、長い間息をひそめ、僕が生まれる瞬間に、目を覚ましたのだ。

 

覚悟を決めた僕は、しゃくれのルーツを受け入れようと思い、おじいちゃんの部屋に入った。部屋には、80年くらい前に撮った家族の集合写真がおごそかに飾ってあった。40人ほど写っていた僕の先祖の、ほぼ全員が、真剣な顔でしゃくれていた。