渋谷でナンパ現場を観察してきました
僕はナンパというものが好きではない。
ナンパ師は女性を不当に専有し、時に恋人のいる女性すら我が物にしてしまう。僕が全然モテないことによる僻みを差し引いても、僕がひねくれていることを差し引いても、なんとも許しがたい事実である。
しかし、考えてみれば、ナンパ師であっても百発百中というわけにはいかないだろうと思う。多くの失敗のうえに成功があるのかもしれない。
そこで調べてみると、すでにそういった研究がされていることが分かった。米ミシガン大学の心理学者が行った実験によると、イケメンによるナンパの成功率でさえ、18%だったという。100回ナンパをすれば、82回は失敗しているのだ。ましてイケメンでない者にとっては、その成功率はさらに低くなるのだろう。
ナンパ師は僕が思っているより多くの敗北を経験していた。
まあ、だからといって僕はナンパを許さない。そう簡単に許してたまるか。「つらいことも乗り越えているんだから、その上での成功は認めてあげようよ」という意見があるかもしれないが、いや、そういうことではない。全然そういうことではない。
だから僕は、僕自身の怒れる気持ちと決着をつけるために、ナンパの聖地と言われる渋谷でナンパ現場を観察することにした。ひねくれていると言われようとなんだろうと、僕は決めたのだ。ナンパの失敗=我々の勝利とし、勝利を掴み取ることを目指したのである。
それではその調査結果をご覧いただきたい。
まずは調査方法について述べる。
この条件のもと、僕はナンパを観察することとした。
続いて調査結果の概要を記す。
ナンパの目撃件数を曜日ごと・時間ごとに区切ってグラフにした。これを見ると、金曜日・土曜日の22:30以降爆発的にナンパが発生していることが分かる。
上記ナンパの成功と失敗の内訳は、以下の通りである。
これを見れば、我々の勝利は目前であるということが分かる。
しかし、ここで勝利の美酒に酔ってはいけない。先に大きな敗北感を味わってこそ、喜びもひとしおというものだ。ということで、まずは我々の敗北シーンからご紹介したいと思う。
まずは女性二人をターゲットにしたナンパである。ここからは臨場感を感じる意味でも、イラストで会話をご紹介していこうと思う。
なんだこれ、全然おもしろくねえ。
全然おもしろくないのである。塵ひとつもおもしろくないのである。
おもしろくないにも関わらず、このあと女性二人は、「お兄さんおもしろいから、ごはん行ってもいいよ」と言ってのけ、三人でイタリア料理店に消えていったのであった。
無念。我々に黒星が刻まれた瞬間であった。
続いての敗北シーンをご覧頂きたい。
続いては、黒髪でおとなしそうな美人の女性に、ホスト風の男性が声をかけた場面だ。
いかがだろうか、この、完膚なきまでの完全敗北。
この女性には、恋人がいるのだ。にもかかわらず、我々は敗北を喫してしまった。許しがたい。まことに許しがたい。
さて、今、我々の中に煮えたぎる激情に気がついているだろうか。それこそが、我々が勝利するために絶対に必要な怨念なのである。
さあ、それでは、お待ちかねの我々の勝利シーンをご覧いただこう。
勝利だ。完全なる勝利だ。早い。なんともあざやか。
ナンパ師は、気の利いたジョークを飛ばしたつもりなのだろうか、それを女性が一蹴したこのシーンは、シンプルながら我々の勝利史に刻まれる名勝負となった。
続いての勝利シーンがこちらである。
新しいタイプだ。すごいのが現れた。これは見逃すわけにはいかない。
女性は、明らかに戸惑っていた。
ああ、それ先に言っちゃうんだ、と思った。これからその人のモノマネするのに、それ先に言っちゃうんだ、と思った。
全然、ウケなかった。
にもかかわらず、男性はモノマネを続けた。
ああ、それ先に言っちゃうんだ、と思った。この人、先に言っちゃう人なんだ、と思った。
女性は、帰ろうとするというフリを拒んだ。
完全勝利だった。何がしたかったのかさえ分からなかった。
モノマネのクオリティの低さもさることながら、先に言ってしまうという大失態を犯したナンパ師の負けだ。我々の、勝利だ。
いかがだっただろうか。
今回、我々は勝利をおさめることができたが、またいつ敗北するか分かったものではない。今後も敗北を忘れず、謙虚に勝利を目指していきたいと思う。
虚しくなど、ない。決して、虚しくなどは、ない。