ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

カリスマが教える「路線変更の方法論」

中学二年生の時、突如として全校集会が開かれた。

なにかと思えば、卒業生がソロで歌手活動をしており、僕たちの前で歌ってくれるということであった。

 

体育館で待っていると、歌手の方が登場した。とてもイケメンな方だった。彼はステージに置かれた椅子に座り、アコースティックギターをいじりながら、おもむろに話し始めた。


「僕は、人生の悲しみやせつなさを歌にして、僕にしか歌えない歌をみんなに届けたいと思って歌手をしています。みなさんにも聴いてほしいと思って、今日僕はここに来ました。」と彼は言った。物静かで、自分の世界を持っているように思えて、僕には彼がカリスマに見えた。非凡な才能がこの中学校から出現したと、僕は興奮でドキドキしていた。

 

いよいよ彼はギターを鳴らし、曲が始まった。曲名は、「夢」だった。

歌詞が、「夢だとわかっていたなら、目覚めたくなかったのに…」みたいな感じだった。僕は、「あれ、こういう歌詞、けっこう、」と思った。

 曲が終わり、拍手が鳴りひびくとともに、僕の頭の中では「僕にしか歌えない歌」という言葉がフラッシュバックしていた。


曲間のMCで彼は、「僕も何年か前まで、みなさんと同じそちら側に座っていました。」と言った。「それはそうだろ」と思った。あと、「その発言はもう少し、有名な、いや、やっぱなんでもない」と思った。


彼はその後、数曲を演奏してくれて、大盛況のうちに全校集会は幕を閉じた。


しかし、彼の活動はこれで終わりではなかった。

翌年、彼は再び僕たちのもとへ帰ってきた。


去年と同じ時期に、去年と同じように全校集会が開かれ、彼のコンサートは始まった。一つだけ去年と違っていたことは、彼に相棒ができていたことだった。相棒の方もイケメンだった。

 

彼と相棒の方が演奏した曲は、ゴリゴリのダンスミュージックみたいなやつだった。

彼は、「ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!ジャンプ!」 などと客席を煽るようにもなっていた。

路線変更、早いなと思った。