ペプチ

コント等をしています。(Twitter: @pepuchi_yan)

おしゃれなジャズバーで起きてしまった惨劇

この間、無性にむしゃくしゃしていたので、めちゃくちゃオシャレなジャズバーみたいなところに行った。普段はバーなのだが、ピアノ等の楽器が置いてあり、時間になると有志がジャズのライブを始めるみたいなめちゃくちゃオシャレな場所であった。なんでそんな場所に行ったのかといえば、むしゃくしゃしていたからだと思う。

 

僕が入店してすぐ、ライブが始まったので、ジャズにそこまで思い入れのない僕がここにいてもいいものか悩んだ。ふと周りを見たら、前に座っているジャズ通っぽいおばさまが、目をつむり、リズムに乗って首を左右に動かしていたので、舐められないようにしないとと思った僕は、同じように目をつむって首を左右に動かした。うまいことジャズ通っぽくできていたかは分からないが、曲が終わった瞬間、僕と目が合ったおばさまは、「素晴らしい演奏だったわね。」とでも言いたげな目で微笑みかけてきた。一応僕も、「ええ。同意見です。」と言いたげな目で微笑み返しておいた。

 

ライブはとても素晴らしく、終演後は拍手喝采であった。

 

ライブが終わると同時に、バーは再び普段の姿に戻り、周囲で雑談が始まった。

その中で、サラリーマン風の男性3人組が、ジャズについて語り合っていた。一人の男性が、昨今の演奏者に対して辛辣なコメントをしていた。「最近はショボい奴が多いのよ。ドラムにしても、皮をなでるだけみたいな叩き方をする奴。ああいうのはだめだよね。俺みたいにしっかり叩かないと。」と言っていた。ジャズへの愛が、他人をディスる方向に行くタイプの人だ、と思った。その後もその男性はしきりに昨今のジャズについて悪態をついていた。

 

しばらくして、またライブの時間が訪れた。次の演奏者はなんと、さきほど昨今のジャズに警鐘を鳴らしていた彼であった。彼がドラムを担当し、他はピアノとコントラバスの、計3名による演奏らしい。

観客が注目するなか、演奏が始まった。ピアニストは目をつむり、優雅に弾きこなしていた。とても綺麗だった。だが、何かがおかしい。どうも、下手くそにきこえる。僕が素人だからで、元々そういう曲なのかなと思い、ふと隣を見ると、ドラムの彼が、引くほど緊張し、演奏を間違えまくっていた。挙句、途中で演奏が止まってしまい、ピアノの方もコントラバスの方も苦笑いをしていた。

なんとか演奏を再開したが、その後もドラムの彼は間違いに間違いを重ね、終演後、バー全体が変な感じになっていた。本当に、変な感じになっていた。

 

ドラムの彼は、席に戻り、「いやぁ、難しいね」と言った。典型的だ、と思った。